参加者さんインタビュー!
「途良や」とは、どのような空間なのでしょう?
実際に「途良や」の取り組みに参加されているみなさんにお話をうかがってみました。
【 インタビュー参加者 】
Nさん:第1回(2018年8月)から参加。30代。北上市在住。
Yさん:2020年2月から参加。30代。北上市在住。
Eさん:2019年11月から参加。60代。北上市在住。
Oさん:第1回(2018年8月)に参加。以降ときどきふらりと訪れる。40代。西和賀町在住。
Hさん:2020年1月から参加。10代。奥州市在住。
Uさん:第1回(2018年8月)から参加。20代。北上市在住。
藤村千紗:途良や代表
木立千賀:途良や代表
ボクでも受け入れてもらえるんだ!
・「途良や」に参加しようと思ったきっかけは?
Nさん:ボクは第1回から参加していますが、「居場所づくり」という取り組みがはじまると知って興味を持ちました。「途良や」ではテーマのひとつに“生きづらさ”というものがあります。ボクもふだん暮らしていて“生きづらさ”というものを感じていて、でも当時の北上市にはそういうヒトたちが気軽に集まれるような場所がなくて、そういうボクでも受け入れてもらえる場所ができると知って参加してみようと思いました。
Eさん:私は隣町にある相談先の元職員の方からの紹介です。いろいろなヒトたちが集まって、ざっくばらんに話をしたりして過ごすということだったので参加してみようと思いました。
Yさん:私はEさんからの紹介です。私は病気がきっかけで障がいを持っているのですが、当時はいろいろなことがあって悩んでいるときで、そういうときにEさんから「いろいろなヒトがいて楽しいよ」というようなお話を聞いて参加してみようと思いました。
Oさん:私は千紗さんの知り合いで、本人から「居場所づくりをやる」という話を聞いて、「ちょっと覗きに行ってみるか」という感じで初回に参加しました。それからときどきふらっと訪れる感じです。
・Hさんはいかがですか?
Hさん:……。
千紗:「途良や」ではSNSで相談も受けていて、Hちゃんはその運営を担当してくれている方と知り合いで、その方の紹介で「途良や」にメールしてくれたのが最初だよね。
Hさん:(うなづく)
千紗:それからメールでやりとりしているうちに、「途良や」にも来てくれるようになったんですよ。
主役は参加者。みんなでつくる、みんなの「居場所」。
・現在はコロナの影響で、LINEのオープンチャットで集まっているとのことですが、それ以前は「途良や」でどのように過ごされていましたか?
Nさん:以前は月1回13:00~17:00までの4時間みんなで集まって、音楽をやったり、本を読んだり、おしゃべりしたりして自由に過ごしていました。そのなかでボクが印象的なのは、「途良や」ではふだんの日常では話せないことも普通に話せて、それがいろんな方向にひろがっていくこと。その時間が楽しいですね。
千紗:「途良や」には決まったプログラムもないし、みんなのおしゃべりもテーマを決めるわけではなく、そのとき参加したヒトたちが、それぞれでヒットしているモノやコトの話題が会話に出てきて、そこからどんどんおしゃべりがひろがっていくからね。
Nさん:世の中にはトゲトゲした場所がいっぱいあるじゃないですか。例えば学校や職場で厳しい言葉を投げかけられたり、人間関係がうまくいかなくてつらい状態になったり……。そういう場所って世の中にいっぱいあると思うんですけど、「途良や」ではおしゃべりしていてもみんながやさしくて、むしろ心があったまる感じがします。
Eさん:私も月1回が楽しみでした。「途良や」に行けば誰かに会えるという安心感と、参加されるみなさんそれぞれに得意なことがあって、Nさんにギターを聴かせてもらったり、Uさんから数学の話を聞いて勉強したり、みんなでいろんな話をしたり……。そういう時間が楽しかったですね。
Yさん:私はずっと自分の「居場所」みたいなものを探していて、こうした「居場所づくり」のような場所にもいろいろ参加しましたが、やっぱりその空間に自分が「合う・合わない」ということがどうしても出てきます。私の経験で言うと、そういう場所では何か障がいを持っていたり病気や悩みを抱えていたりすると、どうしてもそういう部分で見られたり、そこで語られる話題も「障がい」や「病気」のことがメインになります。でも「途良や」はそういうことがなくて、健常者も障がい者もいろんなヒトがいて、いろんな話題が出てきて、そこで話すとき私は障がいや病気を持つ前の感覚に戻れるというか、そうなる前の元の自分、“素”の自分でいられるんです。もちろん、何か問題を抱えているヒトたちが集まって悩みや不安を共有したり解決したりすることも大切なことだと思いますが、私は障がいや病気とは関係ない、元の自分で会話できる場所を探していました。その点で言うと、「途良や」は誰かを基準にするとか、対象者を限定するとか、そういう“偏り”がなくて、その空間に誰でも受け入れてもらえて、「そこに居るだけでいい」「自分は自分でいい」と感じられる空気感が私には合っていると思いました。
木立:「途良や」は誰が来てもいい場所ですからね。
“ありのままの自分”でいられる場所。
Oさん:私は年に数回利用する程度ですが、こういう取り組みは「弱いヒトを助ける」という言い方をしたり、「支援する側とされる側」という構図になっていたり、そういうものが必ず存在します。でも、「途良や」ではそれが感じられない。そこがいいと思ったし、私自身も利用していて「ラクだな」と思いました。
Nさん:そういう意味では、「途良や」はボヤッとしていますよね。枠がない。
千紗:「ボヤッとしている」っていい表現(笑)
Oさん:あとは、強いることがないですよね。今はコロナの影響で月1回の集まりもLINEのグループチャットになっていますが、そこでも話題は自由で年齢とかどんな仕事をしているヒトなのかとか、そういう社会的な地位とは関係のない部分であっという間につながることができる。例えば「自分の好きな食べもの」や「今夜食べたいもの」など取り留めもないことから、好きな映画やマンガの話題に移って、そうしたなかで自分の中にある好きなモノやコトを語っているうちに、自分が抱えている哀しみとかつらさをふと吐露したりして……。それに対してコメントするヒトもいれば、コメントしないヒトもいて、でもそれも自由で、強いられることなく、自分のタイミングで自分が話したくなったらコメントする。解決することが目的ではなく、みんながそこに居ることが大事で、でも近すぎず、離れ過ぎず、変に干渉しすぎず、否定されることもなく、程よい距離感でみんながつながっている。それが居心地の良さにつながっていると思います。
・Hさんは「途良や」に参加してみた感想は?
Hさん:学校では自分をつくらなくちゃいけなくて、できないこともできるフリをして過ごさないといけないけど、「途良や」は“ありのままの自分”で良くて、話さなくても注意するヒトがいないし、緊張して話せない私でもそこにいるだけで落ち着く感じがします。
千紗:Hちゃん、今まで参加はしてくれていたけど話したことがなくて、今日初めて声を聞いたので感動しちゃった(笑)
木立:Hちゃん、ありがとう!
千紗:みんなでずっと見守ってきたからね。
・そうだったんですね。Hさんの感想を聞いていかがですか?
Nさん:そう思ってくれていたんだとわかってうれしいです! 素晴らしい言葉でした。
「聞き上手」に導かれて。
・「途良や」の代表の二人はどんな方ですか?
Nさん:木立さんと千紗さんは話を聞くのがうまいんですよ。どんな話も受け取ってくれるので、いろんな話をしたくなっちゃうんですよね。
Eさん:話を引き出してくれるんですよ。そういうところもいいなと思います。
Yさん:「支援する側・支援される側」ではなくて、私たちと同じ立場で普通に接してくれるので、私たちも構えることなく、話しやすいですね。
千紗:ありがとうございます。でも私たちが目の前にいるので、みなさん褒めるしかないですよね(笑)
・ではOさんは千紗さんの昔からの知り合いということで、敢えて厳しいご意見を!
Oさん:いや、でもやっぱりお二人とも聞き上手ですよ(笑) しかも、「聞き流していない」んですよ。相槌がうまいだけでなく、しっかりと受け止めて聞いてくれていると感じます。特に木立さんは自分の経験則に基づいたエピソードの引き出しがすごくて、私たちの話題にマッチする話が必ず出てくるんですよ。「えっ、そんな話もお持ちなんですか」とこちらがびっくりするぐらいです。でも、経験を踏まえてのご自身の考えを押し付けることもなくて、相手の考えを常に聞こうとされているので、そういう点もすごいと思います。
木立:ありがとうございます(照)
・では千紗さんは?
Oさん:あんまり褒めたくはないですが(笑) でも、「途良や」の空気そのものになっていると思います。社会の常識とか、通念的なものとか、そういう概念がない。バリアがないと言ったらいいのか……。いろいろな考え方を受け入れて、でも一般的な常識に縛られず、どこまでも無限大にひろがっていけるところが、このヒトらしい。あとは「待てる」ヒトですよね。時間を気にせず、そのヒトが言えるタイミングまで「待てる」。その2つが「途良や」の空気をつくっていて、そういうお二人がいるからこそ、今の「途良や」の居心地の良さにつながっているんだろうと思います。
・Hさんはいかがですか?
千紗:HちゃんとはLINEでたくさんやりとりしたよね。だから、他のみなさんとはまた違う印象があると思うんだけど、どう?
Hさん:ひとりひとりのことをよく見てくれていて、みんなで話しているけど、その話の輪に混ざっていないヒトのことまで気遣っていて、何かあったらすぐ気づいてくれるし……。
千紗:LINEでのやりとりはどうだった? 「もっと聞いてほしい」と思うこともあったと思うんだけど……。
Hさん:……。
・そういう自覚が千紗さんにはあったということですか?
千紗:本当にみなさん、そういう風に言ってくれたけど、私たちが「無理をする」ということはなくて、木立さんと二人で「できることをやろう」とはじめた取り組みなので、無理をすると本当に続けられなくなっちゃう。だから、無理をしないでこの場所に居させてくれるのは、本当にみなさんのお陰。相乗効果じゃないけど、私たちがつくっている空気というよりは、みなさんがつくってくれている空気だということは絶対間違いがないし、だから「無理をしない」という意味ではHちゃんに対しても「それ以上は受け止められない」というときは、そういうことを伝えたり、話したり、ということをしてきました。
・その距離感はいかがですか?
Hさん:相談とかするときに「話したい」という気持ちと、でも「話すと迷惑なんじゃないか」という気持ちがあって、そういう風にはっきり言ってくれた方が、私は逆に話しやすいです。
千紗:親の目ですね(笑) Hちゃん、ありがとう。
・参加者さんに育てられていますね。
千紗:本当ですよ(笑)
「途良や」とは? 名前に込めた想い。
・「途良や」(とらや)という名前は、映画『男はつらいよ』で主役を務める寅さんの故郷・葛飾柴又の団子屋さんから命名されたそうですが、当て字が独特ですよね。
Nさん:「途良や」という名前は「中途半端で良い」とか「途方にくれても良い」とか、いろんな意味に取れてボクは好きですね。いい名前だと思います。
千紗:Nくんがその歌もつくってくれたんだよね。
・本当の意味は?
千紗:それは、みなさんが自由に解釈してくれたらいいなと思っています(笑)
・寅さんが旅から帰ってくると、妹のさくらやおいちゃん・おばちゃん、ご近所のタコ社長がいつでもあたたかく(?)迎えてくれる場所が「とらや」で、こちらの「途良や」も映画のように「いつでもふらりと帰ってこられる場所」という願いも込められているそうですが?
Nさん:「途良や」はそういう世界感に近いと思います。なんか人情がある(笑)
Yさん:自分に何か特別な理由がなくても、何もなくても、ふらりと来られる場所というのがあるといいですよね。「途良や」もそういう場所だと思います。
Eさん: 『男はつらいよ』は全部観ました。しかも2回(笑) 私にとっても「途良や」はそういう場所になっていますね。
・Oさんはいかがですか?
Oさん:「途良や」の意味で言えば、映画の寅さんのように「途良や」のお二人とも「生きづらさ」というものをご自身の体験として身に染みてよくわかっているからこそ「中途半端で良い」とか「途方にくれて良い」とか、そういう言葉が出てくるし、そういうヒトたちが集まれる場所が「世の中にない」ということを身に染みて思っているからこそ、「途良や」という空間ができて、今につながっているのかなと思うんですよ。そんなに気張っていないというのも、そういうことなのかなと思って……。
・なるほど。二人とも身に染みてわかっているんですか?
木立:ちょぴっと(笑)
LINEで実感、「途良や」の魅力。
・現在はコロナの影響でLINEのオープンチャットでの交流となっていますが、そちらは?
Nさん:コロナなので仕方ないですけど、やっぱりリアルにみんなで会える「途良や」を早くやりたいという気持ちが強いですね。
Yさん:やっぱり私もリアルに会える方がいいですね。
Eさん: 私もそうです。
Oさん:今は仕方がないことですが、LINEになったことによってリアルでみんなに会えることの良さというか、「やっぱり『途良や』っていい場所だよね」と実感していることが重要で、「あそこに行きたい」と思える場所だったという認識をひとりひとり持っているとすれば、LINEも必要だったのかなと思います。
千紗:あと、今日は来られなかったUくんと電話がつながりました! Uくんも第1回から欠かさず「途良や」に参加してくれているので、ぜひ、最後にひと言!
・Uさんにとって「途良や」はどんな場所ですか?
Uさん:なんというか、「俺でも受け入れてもらえるんだな」「居ていいんだな」と思える場所というか……。世間的な常識にとらわれず、何があってもみんなを受け入れて、きちんと“居場所”を用意して待ってくれている木立さんと千紗さんの二人の懐の深さがすごいと思います。それに「途良や」にやってくるヒトも、みんなやさしいんですよね。また早くみんなと会いたいですね。
◇「途良や」の活動リポートはこちら! ▶▶▶ 活動紹介
◇北上市でがんばる仕事人を応援する「きたかみ仕事人図鑑」にも代表者インタビューが登場! そちらでは「ヒトとつながる」ことを大切にする二人の想いの原点に迫る! どうぞ、ご覧ください。 ▶▶▶ きたかみ仕事人図鑑の記事へ!
(おしまい)